第3回 英語力が引き寄せたチャンス
梅沢なつきさん(30歳) TRAVEL VOICE & NET 勤務
梅沢さんにとって英語はコミュニケーションツールだ。人が好き、
出会いが好き、理解しあいたい、もっと知りたい、知って欲しい。それが彼女が英語を学び始めたきっかけだ。
海外勤務の多かった父親。シンガポールに単身赴任していた父がある夏休みに家族を招待した。梅沢さんが小学生の時。初めての海外。
シンガポールで挑戦したスキューバダイビング。言いたいこと、教えてほしいことがたくさんある。でも日本語を理解しない人々を目の前に「伝えること」はなんて大変なんだろう、そしてそれが通じたときは「なんてうれしいんだろう」ということを知った。
高校で短期留学をした。サンフランシスコ。高校卒業後はカナダへワーキングホリデーへ。このときまでに100万円貯めた。親には一切援助は頼まなかった。パチンコ店や居酒屋でバイトをし、毎月20万円稼いだ。
渡航先のバンクーバーは日本人が多い。しかし日本人の多い場所を避けた。たまたま乗ったタクシー運転手から紹介された仕事をすることに決めた。場所はビクトリア。船上パーティーのウェイトレス。日本人は自分だけだった。当時英語はあまり話せなかった。下手な英語で苦労したが、ここでがむしゃらに働き、なんとか英語を取得。WH期間中、ずっとビクトリアで働いた。その後、カモーソン大学へ進学。ツーリズム&ビジネスマネージメントを学んだ。
この間に16歳年上のパートナーと知り合い、卒業後すぐに結婚。そして出産。22歳。
旅行会社で働きながら、家で翻訳の仕事をした。
娘が5歳の時に和食レストランを始める。夏の半年間は日本から母が手伝いにきて、仕込みをやってくれた。
和食レストランをしながら、旅行エージェントを立ち上げる。
ホームステイコーディネートやサバイバルツアーの案内をした。
しかしご主人をがんで亡くす。あっという間の出来事だった。
娘を連れてバンクーバーへ戻り、旅行会社で1年働いたが、2006年9月に帰国した。
「日本が好き」という娘の意向だった。
そして今の職場へ。慣れない営業に戸惑いながらも「人生に無駄なことはない」と励む。
彼女から見ると今海外で暮らす若い人たちはとても甘えている、という。
他人の銀行口座からお金を自分の口座へ移してしまう日本人留学生。6000ドル使ってしまってお金がない、と親に金の無心をする学生。
自分の時は「道に落ちている小銭を拾って歩いた」、という。
何をしに海外へ来ているのか理解に苦しむ学生をたくさん見てきた。
梅沢さんは言う。せっかく留学するのなら「1年後にこうなっていたい」という目標をつくっているべきだ。
一瞬一瞬を自分の実にしてほしい。
お金にならなくても、ボランティアでも自分のやりたいことをきちんとして欲しい。
日系社会でおさまらないでほしい。
目標のためにその「下積み」に来たんだ、という気持ちでいて欲しい。
彼女は日本人社会という居心地のいい環境を徹底的に避けてきたストイックな人だ。
しかしそのおかげで英語を習得し、人生の選択肢を増やした。
「選べる人生」がある。英語力のおかげで仕事も選べるようになった。
英語の恩恵は仕事だけではない。英語を話せるようになったおかげで日本語の大切さが見えるようになった。
人にものを伝える大切さ。難しさ。
英語だと数倍のエネルギーがかかる。日本語ってなんて美しく便利な言語だろう。
これから留学する人へメッセージ。
ただの憧れ、流行、日本での生活に疲れた、という理由で留学して欲しくない。
現地で目標を見失う日本人は自殺したりドラッグに走ったりする。
意味のある人生を生きて欲しい。
30歳、8歳の娘をもつシングルマザー。日本での彼女と娘の新しい生活が始まる。
半端な気持ちでない彼女だからこその厳しい言葉だ。
文・写真 桜井彰子
